インバウンド向けお土産論~ニュース記事を読んで

お土産売り場で提灯の形をした水筒を見かけたら、あなたは買うでしょうか。日本人の感覚では「誰が使うんだろう」と思ってしまう商品が、いま訪日客の手に次々と渡っています。ただ、これを「お土産事情の異変」と呼ぶのは、少し早いかもしれません。

日本らしさの入り口が広がっただけ

全国放送のテレビ報道の特集で紹介されていたのは、ミニサイズののぼり(1280円~)や提灯型の水筒(3300円)といった商品でした。のぼりを手がけたメーカーは、のぼりが海外にはない日本独自の文化であり、通常サイズでは持ち帰れないがミニサイズならトランクに入る、という点を狙いに挙げています。

つまり、売れている理由は目新しさそのものではなく、「日本の日常風景」が持ち帰り可能なサイズになったことにあります。扇子や和柄の小物が定番だった時代から、選ばれる対象が商店街の看板や祭りの灯りにまで広がった。日本らしさが外国人に手が届きやすくなったと捉えるほうが自然でしょう。

「珍しいから買って帰る」は、贈られた側に届いているか

提灯型の水筒は確かに珍しい。しかしそれは日本人が普段使っているもの=愛用されているものとは違います。本国に持ち帰ったとき、友人や家族が本当に喜ぶかどうかは、正直なところ見えません。買った本人が使うにしても家に帰ったら本当に使うものかどうかも。

買われている理由が「日本の文化に触れたい」ではなく、単純に安いからという可能性も否定できないからです。円安が続く今、外国人にとって3000円前後の雑貨は驚くほど手頃に映ります。海外ではインフレ下、円安下で3000円は彼らにとっては1500円未満にしか感じません。財布の紐が緩んだ状態では、商品の慎重な吟味をしないのです。

もし1ドル120円になった時を想定できている?

ここが土産店にとっての最大の課題です。もし為替が円高方向に振れ、1ドル120円まで戻ったらどうなるでしょうか。同じ商品の体感価格は一気に跳ね上がり、訪日客は必ず吟味を始めます。そのとき「珍しいけれど使わないもの」は、まっさきに棚に戻されるはずです。

だからこそ、売上が伸びている今のうちに品質を高めておくことが最も確実な打ち手になります。素材を上げる、実際に使える機能を持たせる、産地や作り手の物語を英語で添える。円安に支えられている間に、円安がなくても選ばれる理由を仕込んでおく。この順番を逆にすると、為替が戻った瞬間に売り場ごと大変なことになってしまいますよね。

今年の傑作は、空調ファン付きジャケットではないか

その観点で、今年のお土産の傑作を挙げるなら空調ファン付きジャケットです。日本の蒸し暑さという切実な課題から生まれ、日本の技術とアイデアが詰まっている。しかも欧州をはじめ海外でも猛暑が常態化しつつあり、持ち帰った先で実際に使われる。飾って終わりにならない土産は、そう多くありません。

まとめ

テレビ番組では、煽るために「異変」と騒ぐことが多いですが提灯水筒やミニのぼりのヒットは、日本の日常が商品になった証拠であり、異変と騒ぐほどのものではありません(笑)今の売上は円安という追い風に支えられている面があります。為替が戻っても選ばれる品質と実用性を、追い風のあるうちにきちんとインバウンド客向けにニッポンの本物商品を仕込めたらもっと爆発的に売れるのではと思いました。皆さんはどう思われましたか?

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この記事を書いた人

小野秀一郎
(株)インバウンドにっぽん 代表
東京観光財団(TCVB)アドバイザー(5期目)

旅館・ホテル、温泉地向けインバウンド集客の専門家。
全国400軒を支援、50超の案件にアドバイス。

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