観光客減少のタイ。温泉地活性から分かる日本のこと。

中東情勢により観光客数が落ち込むアジアの人気観光地は、どのようにして再び人を呼び込もうとしているのでしょうか。タイが打ち出した「温泉」という切り口に、驚いた方も多いのではないでしょうか。

タイの温泉活用戦略は条件付きで評価できる取り組みであり、特にクラビで進む長期的な複合施設開発についてはとても興味深いです。開発には10年以上もかかるそうなので短期的な観光活性の穴埋め的な起爆剤にはなり得ません。

中東情勢などの影響で、タイを訪れる観光客は前年同時期と比べて50万人以上減少しているとされています。この状況を受け、タイ政府製薬機構は国内に100カ所以上あるとされる温泉資源を活用し、国家レベルで観光振興を進めています。日本の温泉文化を参考に、温泉卵作りなど日本式の楽しみ方を取り入れる動きも見られ、観光地クラビではおよそ64ヘクタールの敷地に宿泊施設や高級ヴィラを含む温泉ベースの複合施設が計画され、完成は11年後とされています。

タイには118カ所の源泉があり、数としては世界75位とされています。一方、源泉の定義や数え方にもよりますが日本には源泉は2万7千か所、温泉は3000近くありますから、タイは非常に少ないと言えます。

タイ・ラヨーンの野外温泉。温泉が観光復活の源となるか?

温泉活用は観光客減少の復活の切り札になるのか

タイ政府製薬機構が国家レベルで温泉を観光資源として位置づけ、日本の事例を参考にしながら温泉卵作りなど新たな観光体験を提供しようとしている点は、天然資源を最大限に活用する試みとして評価できます。100カ所以上という温泉の数は日本からしてみれば大変少ない。

50万人以上という規模の観光客減少を、温泉という単一のコンテンツだけで補えるかどうかは未知数です。温泉はあくまで体験の一つであり、宿泊、交通、飲食、他の観光資源との組み合わせがあって初めて旅行先として選ばれる力を持ちます。

温泉の魅力を発信するだけでなく、周辺インフラや多言語対応、アクセスの改善といった付帯条件が整って初めて、数字としての効果が見込めると考えられます。単独の施策として過信せず、複合的な観光戦略の一部として位置づける姿勢が求められます。

クラビの大規模開発は妥当な投資と言えるのか

クラビで進む64ヘクタール規模の複合施設開発は、完成までに11年という長い期間を要する計画です。近年、欧米を中心にウェルネスやウェルビーイングを重視する旅行スタイルが広がりつつあり、温泉を核とした宿泊施設や高級ヴィラ、レストラン、ヨガ、サロン、ヒーリングスペースを組み合わせた複合施設は、こうした層に強く訴求する可能性があります。

短期的な観光客減少への即効性という点では疑問が残るのは事実ですが、そもそも観光地としてのブランドを確立するには一定の時間がかかるものです。日本の温泉地が長い年月をかけて文化として定着してきた歴史を踏まえれば、タイがウェルネス観光地としての地位を築くために10年単位の投資を行うのは自然な流れです。目先の数字ではなく、10年後・20年後を見据えた布石として捉えていることが分かります。

日本の温泉地はタイの動きから何を学べるのか

タイが日本の温泉文化を参考にしている事実は、日本国内の温泉地にとっても示唆に富みます。温泉卵のような分かりやすい体験コンテンツは、言語や文化の壁を越えて外国人観光客に伝わりやすい要素です。温泉天国である日本では日本人に1000年以上も親しまれている温泉がいくつもありますし、温泉旅、温泉旅館、日帰り湯、スーパー銭湯など様々な楽しみ方があり、完全に日本人の間に定着しています。タイはどうかと言うと、タイ人の間での118か所の源泉の利用状況は詳しいデータについてはネットでざっと調べた限りではほとんど情報が見つかりませんでした。
ここから分かることは、温泉という観光資源は日本に住む日本人に親しまれているからこそ、訪日インバウンド客にとっての魅力であるということです。正直、タイの温泉が大々的に日本の旅行者に向けてPRされたとしても行きたい!と思うような人は多くは無いのではないかと思います。

今日の要点

  • タイは100カ所以上の温泉を国家戦略として観光振興に活用し始めている
  • 短期的な効果は未知数だが、クラビの長期開発は妥当な投資と考えられる
  • 日本の温泉地も体験コンテンツの再構築によって学べる点がある

読んだ記事

https://news.yahoo.co.jp/articles/34a5df2c9ac306b9de973995f3c85e55f8e49fd5

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この記事を書いた人

小野秀一郎
(株)インバウンドにっぽん 代表
東京観光財団(TCVB)アドバイザー(5期目)

旅館・ホテル、温泉地向けインバウンド集客の専門家。
全国400軒を支援、50超の案件にアドバイス。

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