日本にも欧州のような記録的猛暑が訪れたら?
もし来年の夏、日本にも欧州のような記録的猛暑が訪れたら、訪日外国人の行き先や過ごし方はどう変わるのでしょうか。
欧州で進む「南から北へ」の観光シフトは、気候変動が観光産業の構造そのものを変えつつある証拠であり、日本の観光地も対岸の火事とはいえない状況にあると考えられます。
ロイター通信の報道によれば、欧州は記録的な熱波に見舞われ、山火事の消失面積は史上最大規模になる見通しです。経済損失はすでに数千億ユーロ規模に達しました。「数千」が5千億ユーロだとするとその額は日本円にして92兆円になります。これは日本の国家予算の75%にもなります。ライン川やドナウ川の水位低下による物流停滞、原子力発電所の稼働制限、農作物の減収なども発生しています。バケーション旅行者は涼しい北欧へ向かう傾向が強まり、南欧の観光業や財政、さらにはECBの金融政策にまで影響が及ぶ可能性が指摘されています。
観光客は本当に南から北へシフトするのか
夏のピーク時に涼しい地域を選ぶ旅行者が増える傾向が強まるのは当然のことです。暑さを楽しむよりも、避暑・涼しいところへ旅へ行く。日本人が避暑地や山・川へ行きたがるのと同じ考え方ですね。旅行は本来「快適さ」を求める行為であり、命に関わるレベルの猛暑となれば、行き先変更は必至の選択です。
年間総観光客数が南欧で増加する可能性があるという指摘もありますが、それは春や秋への分散を意味するにすぎず、夏季の集中的な打撃を相殺するものではありません。
ホスピタリティ産業にとって最も収益性の高い夏のピークシーズンが縮小するという構造変化は、一時的な現象ではなく、今後数年にわたって定着していく可能性が高いと見るべきです。

ヨーロッパのビーチ。日本もこれ以上暑くなったらどうなるのだろうか?
1年間で92兆円もの経済損失。財政悪化とECBへの波及は避けられないか?
フランスで税収が1.8%、イタリアとスペインで1.3%落ち込む可能性がある点や、緊急対応費と将来投資の両方が財政を圧迫する構図には同意できます。ただし、ECBが追加の量的緩和に踏み切るかどうかは、債券市場の反応次第です。金融政策への波及は「起こりうるシナリオの一つ」として捉えるのが妥当です。
同様のことが日本で起こる可能性も。インバウンド客の動向はどうなる?
日本にとって重要なのは、この欧州の事例が対岸の火事ではないという点です。来年以降、日本でも同様の酷暑が訪日客の行き先を変える可能性があり、東京や京都、大阪など都市部では夏季の集客対策が急務になると考えられます。
現在、東京などでもナイトエコノミーの充実化を図るべく様々な実証事業が検討されています。しかし、外国人が関心が高い寺社仏閣の拝観時間が例えば朝8時から夕方5時という日中の時間帯に集中しています。また浅草の有名観光スポットでも仲見世通りの店舗が夜7時には閉まってしまいますし、新宿御苑も夕方6時に閉まります。比較的涼しい夜間の時間帯での既存の観光インフラは全般的に整っているかというと、十分とはいえないのです。
直ぐに変えられることは少ない中でいまできる対策とは何か?
まず取り組みやすいのは、現状で対応可能な限りのナイトエコノミーの情報発信を強化です。日没後の涼しい時間帯に楽しめるコンテンツ情報を、多言語の観光サイトやSNSで発信することから始められます。暑さを避けるならば、7~8月以外に訪日したほうが良いという情報も発信をすべきです。そのほうが訪日客の満足度を高いまま維持できます。
- 南欧の夏季観光客減少は、涼しい地域への構造的なシフトを示唆している
- 日本の観光都市ではナイトエコノミー強化が急務
- 寺社仏閣、行政が運営する公園などでは営業時間を延長するなど対策が必要。
FAQ
Q1. 欧州の観光客シフトは一時的な現象ですか?
A. 気温上昇が今後も続くと予測される以上、夏季の行き先変更は一時的というより構造的な変化として定着していく可能性が高いと考えられます。
Q2. 日本の観光地はどのような対策が必要ですか?
A. 寺社仏閣の拝観時間や商店街の営業時間を延ばすなど協力を得て、夕方以降に楽しめるナイトエコノミーを強化することが、猛暑下でも訪日客の満足度を維持する現実的な一歩になります。
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この記事を書いた人
小野秀一郎
(株)インバウンドにっぽん 代表
東京観光財団(TCVB)アドバイザー(5期目)
旅館・ホテル、温泉地向けインバウンド集客の専門家。
全国400軒を支援、50超の案件にアドバイス。
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