日本人が旅行でAIを利用しないのはなぜ?AI以前の問題とは・・
Booking.comが2025年に33市場を対象に行った調査では、旅行分野でのAI活用率は世界平均67%。これに対し日本は33%にとどまっています。JTB総研の調査でも情報検索の手段としてAIの利用率は2024年の9.7%から2025年の28.8%に上昇したもののまだ低い状況です。米国では旅行検索での検索エンジン利用が2024年の51%から2025年には36%へと急落しており、AIへの置き換わりが数字にはっきり表れています。欧米諸国も米国の動きと同様に傾向が表れています。
JTB総研の調査によると日本国内での旅行情報検索での生成AI利用は28.8%へと約3倍に急増したものの、検索エンジンの利用率は82%前後でほぼ変わっていません。つまり検索エンジンは今も旅行の下調べや計画などに使われ続けている、ということです。急速なキャッチアップと根強い旧来行動が同時に進んでいる状態です。

海外旅行へ行かなくなる日本にインバウンド客が来つづけるのか?限界点は?
日本とアメリカの差はなぜ生まれるのか
日本とアメリカのこの差はなぜ生まれるのでしょうか。理由の1つとして挙げられるのは「日本人はAIを信頼していないから」というものです。Booking.comの調査でも、AIに期待を抱く人は91%いる一方、「完全に信頼している」と答えたのはわずか6%でした。しかし、これだけで日本のAI活用率の低さを説明できるのかは疑問が残ります。
もう1つの理由としては日本のクチコミ文化の発達が挙げられます。じゃらんや楽天トラベルのレビュー機能はたしかに充実しており、「実際に行った人の声」を重視する土壌があります。けれども、アメリカ人が海外旅行の行き先を選ぶときも、現地のクチコミを重視するのは同じではないでしょうか。世界最大の旅行情報サイト、Tripadvisorにはホテル、レストラン、旅ナカ体験について毎日膨大な数のクチコミが投稿されますが、この企業は米国発です。つまりこの説明でも、日本固有の理由にはなりきらない気がします。
明白な理由1:日本人はそもそもAIを使っていない
日本人はそもそも普段の生活でAIを活用することが少ない。総務省の「令和7年版情報通信白書」によれば、日本の個人の生成AI利用経験は26.7%で、前年の9.1%から急増したとはいえ、米国68.8%、ドイツ59.2%、中国81.2%と比べればまだ大きな開きがあります。旅行以前に、生活全般でAIに触れる機会自体が少ないのです。
明白な理由2:海外旅行需要そのものの縮小
そして、もう一つ見落とせないのが日本人の海外旅行そのものへの需要の縮小です。2024年の日本人の出国者数は1300万人でコロナ直前の2019年比で35.2%減、翌年2025年は1473万人余りで増えたものの、2019年比でも26.6%低かったのです。続く円安や近隣国への渡航事情の変化、物価高やエンゲル係数の上昇など、家計の余裕が失われる要因が重なった結果でしょう。2019年の米ドルは1ドル108円程度だったのを覚えています。2026年の夏は160円前後ですから、日本人にとってみれば数年経ってみたら1.5倍も旅行先の物価が上がっていたということになります。海外旅行意欲の減退は、「知らない土地へ行きたいから旅行検索する」という行動そのものを起こさせないという結果になっているということです。日本人のパスポート保有率はわずか17.5%というのも、海外旅行へのニーズの低さを如実に表していると言えます。
一方で先述のように、国内旅行については、日本人は豊富な観光情報にすぐに触れることもできるし、馴染みの場所についてはわざわざAIを使って調べる必要もありません。「知らない場所についての観光情報を体系的に収集したい」というニーズが発生しないのも分かる気がします。
筆者は特に若い人には、若い頃にしかできない発見や出会いを海外で得てもらいたいと切に願っています。それが日本の観光力を上げることに繋がると信じているからです。つまりアウトバウンドが増えれば、それだけ海外の市場を肌で体感した日本人が増えることになり、ゆくゆくはインバウンドの総合力を上げることに繋がるのです。
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この記事を書いた人
小野秀一郎
(株)インバウンドにっぽん 代表
東京観光財団(TCVB)アドバイザー(5期目)
旅館・ホテル、温泉地向けインバウンド集客の専門家。
全国400軒を支援、50超の案件にアドバイス。
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