大阪の中国インバウンド減少から学べること

筆者は大阪生まれなので、大阪を中心とした関西のインバウンドの動向を常に気にしています。大阪を訪れる外国人観光客の数が減っていると聞いて、驚いた方も多いのではないでしょうか。円安が続き、訪日ブームが盛り上がっているはずのタイミングで、なぜ減少が起きているのか気になるところです。

上半期の大阪インバウンド7.7%減は、中国依存という構造的な弱点が表面化した結果であり、脱却に向けた動きを急ぐべきです。

公益財団法人大阪観光局は7月29日の定例会見で、大阪府の観光概況や国内旅行に関する市場調査、大阪ハリウッドプロジェクトなどについて報告しました。上半期のインバウンド訪問者数は前年比7.7%減となり、中国からの訪問者数の大幅減少が主因とされています。これを受け、欧米市場へのアプローチ強化が示されました。

大阪訪日客増の勢いに水をさした中国インバウンド。今後の取り組みが注目されます

上半期7.7%減の要因をどう見るべきか

中国からの訪問者数の大幅減少が説明されている点は、素直に受け止めるべきデータと考えられます。特定の国・地域への依存度が高い観光地は、その国の経済情勢や外交関係、渡航規制の変化によって数字が大きく揺れ動くリスクを常に抱えています。今回の減少は、まさにそのリスクが顕在化した事例だといえるでしょう。回復を待つという選択肢もありますが、いつ回復するか予測できない要因に頼り続けることは、観光関連事業者の経営計画そのものを不安定にします。中国依存からの脱却を急ぐべきだという見方には強く同意できます。訪問者の出身地を分散させておけば、一部地域からの減少があっても全体への影響を緩和できます。上半期の数字は、大阪の観光戦略が特定市場に偏っていたことを示す警鐘と捉え、今のうちに構造転換を進めておくことが、中長期的な安定につながると考えられます。

欧米市場強化は本当に有効な一手か

市場を多角化してリスク分散を図るという狙いは理にかなっており、方向性としては同意できます。ただし、欧米からの誘致には投資対効果の見極めという留保が欠かせません。

欧米圏は渡航距離が長く、旅行者一人あたりの誘致コストがアジア圏と比べて高くなりやすい傾向があります。加えて、欧米の富裕層や長期休暇層をターゲットにする観光地は世界中に数多く存在し、他都市との競合も避けられません。

大阪は近畿・関西の中心であり、また東海道新幹線という「観光の大動脈」の中心でもある点を活かすべきです。京都や奈良などの古都、有馬や城崎、白浜への温泉地、熊野古道や伊勢など日本人が昔から歩いた道が近い。そこが東京と異なる点であり外国人が気に入っている点。自然と都市のコンパクトなまとまり、1日違いで行き先を変えて様々な場所へ日帰りで行けることもPRすべきでしょう。大阪オンリーではなく、1つの関西圏として訴求力をつけるほうが得策です。

大阪が欧米市場でどのような独自の魅力を打ち出せるのか、具体的な訴求軸が明確でなければ、投じた予算に見合う成果が得られない可能性があります。欧米強化という方針自体は多角化の第一歩として支持できますが、効果測定の指標をあらかじめ定め、成果が出ない施策は早期に見直す柔軟さを持つことが条件になると考えられます。

旅行検索によく使われている媒体はAI台頭で今年下半期にさらに変化する可能性も

旅行先を検討する際の情報収集手段として、最も多かったのは「宿泊予約サイト/アプリ」(50.3%)で、全体の約半数を占めました。次いで「旅行会社ホームページ/アプリ」(26.4%)「旅行ガイドブック」(20.1%)などが挙げられましたが、私が気になったのはAI(前年1.3% → 4.7%)が3倍以上で大幅増加。昨年からのAIの台頭でAIにおすすめの旅行先や飲食店を聞くという行動が益々増えてくるでしょう。

大阪の事例からの学び

観光関連事業者であれば、まず自社の顧客データを国籍別に洗い出し、中国からの依存度を数値で把握することから始めるとよいでしょう。依存度が可視化されれば、欧米や他のアジア市場へのアプローチをどの程度強化すべきか、具体的な判断材料が得られます。

  • 大阪の上半期インバウンド7.7%減は中国依存の弱点が表面化したものであり、脱却を急ぐべき局面です
  • 欧米市場強化は多角化として支持できますが、投資対効果と競合状況を見極める留保が必要です
  • 消費者が日々使うAIが旅行時の検索にもさらに活用される傾向に

FAQ

Q1. 中国依存からの脱却はすぐに実現できるのでしょうか。
A. 短期間での実現は難しいと考えられます。市場開拓には時間がかかるため、複数年単位での計画が必要です。

Q2. 欧米市場強化はどの程度の期間で成果を見るべきですか。
A. 明確な基準は示されていませんが、投資対効果を測る指標をあらかじめ設定し、定期的に見直す姿勢が求められると考えられます。

Q3. 旅行先・ショッピングの収集方法もどんどん変わっていく
A. 旅行先を検討する際の情報収集手段として、最も多かったのは「宿泊予約サイト/アプリ」(50.3%)で、全体の約半数を占めました。次いで「旅行会社ホームページ/アプリ」(26.4%)「旅行ガイドブック」(20.1%)などが挙げられましたが昨年からのAIの台頭でAIにおすすめの旅行先や飲食店を聞くという行動が増えてくるでしょう。

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この記事を書いた人

小野秀一郎
(株)インバウンドにっぽん 代表
東京観光財団(TCVB)アドバイザー(5期目)

旅館・ホテル、温泉地向けインバウンド集客の専門家。
全国400軒を支援、50超の案件にアドバイス。

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